2016/04/07

《大漢和辞典》第一巻中の難字1

【𠀓】【𠀦】【𠀸】【𠁠】【𠂐】 【𠂟】【𠂧】【𠪃】【𠧝】【𠂸】
【𠃺】【𤱡】【㐤】【𥝀】【𠄿】 【亠】【𠅂】【𠅚】【𠅦】【𠆋】
【𠆐】【𠆑】【𠆚】【𠆟】【𠇳】 【𠇵】【𠇯】【𠈦】【𠊏】【𠋗】




【𠀓】36 シ 義未詳 〔字彙補〕𠀓、音思。
《新修玉篇》卷十七《弓部》引《類篇》 (148c)
  𠀓,音西。
《篇海》卷二《弓部》引《類篇》 (268a)
  𠀓,音覀。

 「𠀓」はおそらく「亞」が変化した字である。「音西」は「音襾」或いは「音亞」の訛であろう。《古俗字略》卷又五《禡韻補》「𠀓,古亞。」(184b)とある。

【𠀦】50 ケイ 義未詳 〔海篇〕𠀦、音形。
《新修玉篇》卷一《一部》引《川篇》 (8a)
  𠀦,音邢。
《篇海》卷十四《一部》引《川篇》 (497b)
  𠀦,音形。

 「𠀦」は「刑」が変化した字である。《考釋》0005𠀦「“刑”字本作𠛬,…,上两短横连书而延长之,下两短横变作两点,则成𠀦字。」(2)、《古文疏證》形「𠀦,此即刑字。」(191)のいう通り。P.3315《尚書釋文》「𠀦,古刑字。法也。」とある。

【𠀸】61 ヤ 義未詳 〔海篇〕𠀸、音夜。
《龍龕》卷四《一部》去聲 (150)
  [⿱一⿰𠕀⿱卜乙],音夜。

 「𠀸」は「⿱一⿰𠕀⿱卜乙」の訛、「⿱一⿰𠕀⿱卜乙」は「夜」が変化した字である。《考釋》0008𠀸「“[⿱一⿰𠕀⿱卜乙]([⿱一⿰𠕀乞]、𠀸)”音夜,即“夜”字之变。」のいう通り。

【𠁠】66 ショ 義未詳 〔字彙補〕𠁠、且去聲。
《篇海》卷九《且部》引《搜真玉鏡》 (412a)
  𠁠,七夜切。

 「𠁠」は「笡」「𢲶」の異体字である。《越諺》卷中《形》「𠁠,七夜切,且去聲。同“𢲶”。凡物斜低一面。」、また《慧琳音義》卷四十《大力金剛經》音義「笡,《韻英》云:“柱斜也。”」(1585)、《篇海》卷五《竹部》引《玉篇》「笡,七夜切。逆也。」(329c)、とある。「𠁠」「笡」「𢲶」は同音同義であり、異体字である。

【𠂐】126 音義未詳 〔字彙補〕𠂐、唐武宗製、音義闕。
明・胡應麟《華陽博議》「唐武宗製“𠂐”“𡦺”二字,以試王起。起言……此字羣書未見。武宗笑曰:“嚮試卿耳,二字實吾所自製。”」
 待考。

【𠂟】136 キン 義未詳 〔海篇〕𠂟、音今。
《篇海》卷六《丿部》引《搜真玉鏡》 (354b)
  𠂟,音今。

 待考。

【𠂧】143 シン 義未詳 〔海篇〕𠂧、音愼。
《篇海》卷六《丿部》引《搜真玉鏡》 (354b)
  𠂧,音值。

 待考。

【𠪃】159 ビ 義未詳 〔海篇〕𠪃、音眉。
《新修玉篇》卷三十《龍龕雑部》平聲引《類篇》 (242c)
  [⿸𠂆眉],音[⿸户目]。
《篇海》卷六《丿部》引《搜真玉鏡》 (354b)
  [⿸𠂆⿸𠃜月],音肩。

 「𠪃」「⿸𠂆眉」「⿸𠂆⿸𠃜月」は「肩」の異体字である。《叢考》[⿸𠂆肩]「此字當即“肩”的俗字。」(26)とあるように「⿸𠂆肩」は「肩(𦙪)」の異体字であり、「⿸𠂆⿸𠃜月」も「肩」の異体字である。「音眉」は「音肩」の訛あるいは望形生音。

【𠧝】189 キョ 義未詳 〔海篇〕𠧝、音虛。
《龍龕》卷四《雑部》平聲 (545)
  𠧝,音虚。

 待考。

【𠂸】199 クワウ 義未詳 〔字彙補〕𠂸、音皇。
《篇海》卷一《雑部》 (412a)
  [⿵凢⿱上廾],音皇。

 待考。また《龍龕》卷四《雑部》平聲「[⿵凢井],音皇。」(546)とある。《古俗字略》卷二《陽韻》には「凰,雌鳳。䳨,同上。䍿[⿵凢⿱上廾][⿵凢井],並古。」(60a)とある。

【𠃺】201 キウ 義未詳 〔字彙補〕𠃺、音臼。
方言字。《越諺賸語》卷上「出𠃺。」(注「弄巧成拙。」)。

【𤱡】202 ダ 義未詳 〔字彙補〕𤱡、徒多切、出釋典呪語。
《龍龕》卷三《彐部》平聲 (368)
  [⿰𢑑也][𢑠],絁、陁二音。在呪中。
《龍龕》卷四《雑部》平聲 (547)
  [⿰⿳𠃍一丑㐌][⿰⿳田丑㐌],二音陁。

 「𤱡」は「陁(陀)」が変化した字である。《龍龕研究》(297)参照。

【㐤】211 タン・キウ 義未詳 〔字彙補〕㐤、都寒切、音丹、太上作、見亳州老君碑、又其鳩切、音求、義同。
《篇海》卷十二《十部》俗字背篇 (463b)
  ,音丹。太上作。張道忠添注:从九从真。𨿽与丹同声,義理全異。自来丹経子書皆説七返九還丹藥也。……。

 「音丹」の「㐤」は「丹」の異体字といわれる。《漢語大字典・十部》「㐤,同“丹”。道家造字。取九转成真丹之意。」(76a)。
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《龍龕》卷二《九部》平聲 (332)
  ,音求。

 「音求」の「㐤」はおそらく「馗」が変化した字である。《可洪音義》卷二十八《辯正論一部》第六卷音義「馗,音求。」(60/508b)とある。「㐤」「馗」は近形同音である。《叢考》(84)参照。

【𥝀】212 シヤ 義未詳 〔字彙補〕𥝀、牀斜切、見續高僧傳。
《龍龕》卷二《也部》 (341)
  𥝀,音虵。又《舊藏》作馳。在《續髙僧傳》第七卷。

 「𥝀」は「蛇」が変化した字である。《玄應音義》卷十二《長阿含經》第二十一卷音義「虵(蛇),實遮反。經中作“𥝀”,誤也。」、《可洪音義》卷十二《長阿含經》第二十一卷音義「𥝀,市遮反。《經音義》作“𥝀”。」(59/986b)、同卷二十五《一切經音義》第十二卷音義「𥝀,市遮反。見《藏》作“虵”。」(60/368c)とある。

【𠄿】285 ヰ 義未詳 〔康煕字典〕𠄿、玉篇、音圍、義無考。
《玉篇》卷一《二部》 (11)
  𠄿,音圍。

 待考。

【亠】286 トウ・ヅ 〔字彙補〕徒鉤切 ㊀義不明。人の首の義か。〔字彙〕亠、義闕。
《正字通・亠部》に「亠字,六書不要為字母,本無音義。」とある。音は「頭」から借りたものと思われる。

【𠅂】290 ケツ 義未詳 〔字彙補〕𠅂、古折切、音結。
《篇海》卷一《雑部》 (259d)
  𠅂,音詰。出《西江賦》第一。

 待考。

【𠅚】315 ケイ 義未詳 〔五音篇海〕𠅚、音畦。
《篇海》卷四《亠部》引《搜真玉鏡》 (326c)
  𠅚,音畦。

 待考。

【𠅦】321 ベン 義未詳 〔搜眞玉鏡〕𠅦、音勉。
《篇海》卷四《亠部》引《搜真玉鏡》 (326c)
  𠅦,音勉。

 待考。「勉」の声符を「免」から「寃(冤)」に換えた字が変化したものか。《字彙補》子集《亠部》には「𠅦,音義與勉同。」とある。

【𠆋】333 音義未詳 〔康煕字典〕𠆋、石林燕語、唐時、王起不識𠆋𠱛二字、今考列子、𠱛音丙、𠆋未見所出、存以備考。
「𠆋」は「𠆗」が変化した字である。《漢語大字典・亠部》「𠆋,“𠆗(泰)”的讹字。按:《全唐文紀事》字作“𠆗”。“𠆋”当为“𠆗”的讹字。」(323a)とある。

【𠆐】336 キヨク 義未詳 〔海篇〕𠆐、音旭。
《篇海》卷四《亠部》引《搜真玉鏡》 (326b)
  𠆐,血役切。
 ※成化本は「⿳亠朋灬」

 「𠆐」はおそらく「瞁」が変化した字である。《廣韻》入聲《昔韻》許役切「瞁,驚視。許役切。」(519)とあり、「𠆐」「瞁」は近形同音。《叢考》(106)参照。
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《龍龕》卷二《火部》平聲 (238)
  𠆐,古文。布胡反。迯也,竄也。今作“逋”。

 「𠆐」は「逋」が変化した字である。
 《玄應音義》卷七・《慧琳音義》卷二十八《正法花經》第二卷音義「𠆐,經文或作𠚏,此應逋字,補胡反。逋,逃也。《廣雅》:“逋,竄也。”」(《中華大藏經》所収高麗蔵本は「⿳亠昍灬」(56/921b))、《可洪音義》卷五《正法華經》第二卷音義「𠆐,徒困反。逃也,隱也。正作遁、遯、𨙆三形也。上方經作[⿻𦥛一],《經音義》作𠚏,並同音遁。」(59/705b)、対応経文:西晋・竺法護譯《正法華經》卷二「若干種鳥,眷屬圍繞,種種虺蛇,蝠螫遁(宋、宮本作「⿶⿶千凵凵」,元、明本作「逋」)竄。」(T09,p0076b)。「𠆐」は「逋」あるいは「遁」の異体字である可能性が高い。
 形から見て、「𠆐」は「逋」が変化した字である。「甫」が「⿱亠䀠」に変化(参《龍龕》(70):𡶤,正作崩。)し、「辶」が「一」さらに「灬」に変化したのが「𠆐」である。また《説文》卷二《辵部》「逋,亡也。」、《廣韻》去聲《慁韻》徒困切「遁,逃也,隱也,去也。」(399)、「逋」「遁」は近形近義である。よって可洪は「𠆐,正作遁。」としたが、「𠆐(逋)」と「遁」は異文であるが異体字ではない。《龍龕研究》(284)、《續考》(17)、《經音義文字研究》(87)参照。

【𠆑】337 アウ 義未詳 〔龍龕手鑑〕𠆑、音奥、出六度集。
《龍龕》卷一《亠部》去聲 (130)
  〾𠆑,新藏作“奥”。在《六度集》。

 「𠆑」はおそらく「奥」が変化した字である。

【𠆚】340 スイ 義未詳 〔五音篇海〕𠆚、音衰。
《龍龕》卷一《亠部》平聲 (129)
  [⿳亠昍死],古文,音衰。

 「𠆚」は「衰」が変化した字である。「衰」の中部の「冄」が「𠕋」から「䀠」に、下部の「衣」が「死」に変化したのが「𠆚」である。《可洪音義》卷十八《阿毗達磨法蘊足論》第十一卷音義「[⿳亠冉死],楚危、所追二反。正作衰、𤸬二形。」(60/93)、同卷二十三《經律異相》第二卷音義「[⿱亠⿳丿𠕋死],所追反。」(60/263)対応経文:《經律異相》卷二「解興衰之本。」(T53,p0008b)。「⿳亠冉死」「⿱亠⿳丿𠕋死」もまた「衰」が変化した字である。《字彙補》子集《亠部》には「𠆚,音義與衰同。」とある。

【𠆟】343 ビ 義未詳 〔搜眞玉鏡〕𠆟、音尾。
《篇海》卷四《亠部》引《搜真玉鏡》 (326c)
  𠆟,音尾。

 「𠆟」は「亹」が変化した字である。《五經文字・爨部》「亹,音尾。」、「亹」と「𠆟」は同音である。「亹」は「亠」「舋」に従い、「舋」は「釁」の異体字である(参《廣韻》(393))ため、「亹」はまた「⿱亠釁」に作る。「⿱亠釁」の「⿱⿴臼同冖」が「𦥯」に、「⿱酉分」が「彖」に変化したのが「𠆟」である。《龍龕》卷一《亠部》上聲「[⿳亠⿰䀠目冝][⿳亠䀠冝][⿳亠䀠夏][⿳亠𦥯直][⿳亠𦥯且]五俗。[⿳亠⿱⿴臼冃冖且][⿱⿳亠⿴臼冃冖⿱酉灬]二或作。[亠釁][⿱⿳亠⿴臼冃冖⿱目分]二正。《玉篇》:音尾。美㒵,又進也,又靖也。九。」(129)、この九字もまた「亹」が変化した字である。《古俗字略》卷三《尾韻》(81a)が「古尾」とするのは誤り。

【𠇳】535 シツ 義未詳 〔海篇〕𠇳、音失。
《篇海》卷十五《人部》五畫引《搜真玉鏡》 (513c)
  𠇳,音失。

 「𠇳」は「佚」が変化した字である。《考釋》(29)参照。

【𠇵】536 カン 義未詳 〔海篇〕𠇵、音敢。
《篇海》卷十五《人部》五畫引《搜真玉鏡》 (513c)
  𠇵,徒感切。見《詩》也。

 「𠇵」は「𠆶(髧)」が変化した字である。《集韻》上聲《感韻》徒感切「髧𠆶,髪垂皃。《詩》:“髧彼兩髦”。或从人。」(447)、「𠇵」と「𠆶」は近形同音。《直音篇》卷一《人部》「𠆶,音禫。止也。𠇵,同上」とある。《字彙補》子集《人部》「𠇵,徒覧切。音噉。義闕。」とあり、「音敢」は「音噉」の誤り。

【𠇯】537 キヨ 義未詳 〔篇韻〕𠇯、音去。
《龍龕》卷一《人部》去聲 (36)
  𠇯,俗,音去。

 待考。

【𠈦】624 音義未詳 〔字彙補〕𠈦、見毘陵志漢司農劉夫人碑、音義未詳。
 待考。

【𠊏】816 ギヨ 義未詳 〔海篇〕𠊏、音御。
《龍龕》卷一《人部》去聲 (36)
  [⿰侁亍][⿰佉弓][⿰偉阝],三俗。魚據反。正作“御”。
《新修玉篇》卷三《人部》九畫引《古龍龕》 (25c)
  [⿰侁亍],音御。
《篇海》卷十五《人部》九畫引《龍龕》 (516a)
  𠊏,音御。

 「𠊏」は「⿰侁亍」の訛、「⿰侁亍」は「御」の異体字である。《龍龕》に「𠊏」はなく、《新修玉篇》の「⿰侁亍」と《篇海》の「𠊏」は字の配列が同じ位置にあり、「𠊏」は《龍龕》の「⿰侁亍」のことである。朝鮮本《龍龕》卷一《人部》去聲「[⿰侁亍],俗。魚據切。正作御。𠊏,同。」とある。《叢考》(54)参照。

【𠋗】914 ア 義未詳 〔海篇〕𠋗、音鴉。
《篇海》卷十五《人部》九畫引《搜真玉鏡》 (516b)
  𠋗,於加切。

 「𠋗」は「俹」が変化した字である。《龍龕》卷四《一部》去聲「𠄮,新蔵作亞。」(525)、𠋗の旁は「𠄮(亞)」が変化したものである。「俹」は《集韻》上聲《麻韻》於加切「俹,傲也。」(209)とあり、「𠋗」と同音。《叢考》(56)参照。


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