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2017/08/19

字典「士」

「士」

釋義

甲骨文

官名を表す。人名の前につける。
  1. 名:職官名。
    甲子卜,賓貞:[⿱匕鬯]酒才(在)疾,不从古。
    《合集》9560;賓三

    庚午卜,出貞:●曰:以賈齊,以。
    《英藏》1994;出一

金文

男性および官名を表す。
  1. 名:おとこ。(成人)男子の通称。
    王令(命)南宮率王多
    柞伯簋,《銘圖》05301;周中

    敺(毆)孚(俘)女、羊牛。
    師㝨簋,《銘圖》05366-05367;周晩
  2. 名:才能のある人。
    咸畜胤
    秦公簋,《銘圖》05370;春早

    余咸畜胤
    晋公盆,《銘圖》06274;春晩
  3. 名:職官名。人名の前につける。
    王令衜(道)歸(饋)貉子鹿三。
    貉子卣,《銘圖》13319;周早

    戍右殷立中廷。
    殷簋,《銘圖》05305-05306;周中

    王乎(呼)曶召克。
    克鐘,《銘圖》15292-15297;周晩
  4. 名:軍士。兵士。
    凡興被(披)甲,用兵五十人以上。
    新郪虎符,《銘圖》19176;戰晩

    凡興被(披)甲,用兵五十人以上。
    杜虎符,《銘圖》19177;戰晩

楚簡

人の汎称、また役人の意味に用いられる。
  1. 名: おとこ。(成人)男子の通称。また、ひと。
    又(有)志於君子道胃(謂)之𠱾(志)
    郭店《五行》7

    [《清𫳝(廟)》曰:“肅雝顯相,濟濟]多,秉文之德。”
    上博一《孔子詩論》6

    𠭯奮甲,殹(繄)民之秀。
    清華壹《耆夜》5
  2. 名: 才能のある人。賢い人。
    躳(躬)與凥(處)𪣬(館)。
    上博五《苦成家父》1
  3. 名:卿士。役人。
    姑(苦)城(成)[⿱爪家](家)父事[⿰⿻木𦥑攵](厲)公,爲
    上博五《苦成家父》1
  4. 「士尹」: 職官名。司法官。
    壬寅,五帀(師)士尹宜咎。
    包山《所属》185

    里公邞眚(省)、士尹紬[⿱𠦉診](慎)[⿱反止](返)孑。
    包山《集箸言》122

    士尹□□之。
    夕陽坡1
  5. 「士𠂤(師)」: 職官名。司法官。
    士帀(師)墨、士帀(師)𬪌(陽)慶吉。
    包山《集箸》12

釋形

斧鉞の象形。甲骨文では「王」と字体を共有していたが、のちに分化した(林沄)。
漢代には中部両側に点を加えた字がみられる。

釋詞

甲骨文や戦国晋系文字では「在」が{士}に用いられており、{才}と{士}は同源詞である可能性がある。


2017/08/15

字典「采」

「采」

釋義

甲骨文

特定の時間帯を表す「大采」「小采」の語に用いられる。一期甲骨文にしか見られず、以降は「朝」「莫(暮)」など別の用語に取って代えられたようである。
  1. 「大采」「大采日」:時間詞。朝方。
    癸亥卜,貞:旬?一月。昃雨自東。九日辛未大采各云(雲)自北。
    《合集》21021;𠂤小

    丙午卜:今日其雨?大采雨,自北延[⿰戌大],少雨。
    《合集》20960;𠂤小

    乙卯卜,㱿貞:今日王往于𦎫〼之日大采雨,王不[步]〼
    《合集》12814正;典賓

    乙卯卜,㱿貞:今日王往于〼之日大采雨,王不〼
    《合補》3643正;典賓
  2. 「小采」「小采日」:時間詞。日暮れ頃。
    癸巳卜,王:旬?四日丙申昃雨自東,小采既。
    《合集》20966;𠂤小

    丁未卜:翌日雨?小采雨,東。
    《合集》21013;𠂤小

    今日小采允大雨。
    《合集》20397;𠂤小

    癸亥卜,貞:旬?乙丑夕雨。丁卯夕雨。戊小采日雨,風。己明啟。
    《合集》21016;𠂤小

金文

西周における「采」は周王から貴族に与えられた土地を指す。他の賜与地と異なるのは、采主は租税を徴収したり服役を課したりすることができたものの土地の管理運営には携わらず、采の統治権はなお王室の下にあることである。
  1. 名:采地。 王から貴族に与えられた土地。
    今兄(貺)畀女(汝)䙐土,乍(作)乃
    中鼎,《銘圖》02382;周早

    王才(在)𢇛,易(賜)[⿺走𠳋](遣)
    遣卣,《銘圖》13311;周早

    [⿸户貝](胥)朕[⿸疒㚔]田、外臣僕。
    聞尊,《銘圖》11810;周早

楚簡

{彩}{綵}の意味に用いられる。郭店《性自命出》「」を上博一《性情論》は「」に作る。
  1. 動: みだれる。=㥒
    不又(有)夫柬﹦(簡簡)之心則
    郭店《性自命出》45
  2. 「采(綵)勿(物)」:彩色を施した旌旗・衣服など。その彩色によって貴賤を区別した。
    𪴨﹦(業業)天[⿱陀土](地),焚﹦(紛紛)而多采(綵)勿(物)
    上博三《恒先》8

    恙(祥)宜(義)、利丂(巧)、采(綵)勿(物),出於[⿱乍又](作)。
    上博三《恒先》7

釋形

「爪」(手の象形)と、「木」または「枼(あるいは“㕖”[1])」からなり、手で葉(あるいは実)を摘み取るさまの象形で、「採」の初文。甲骨文の二種の字体のうち、ただの「木」に従う字体が後代に引き継がれた。

釋詞

「采」声字は「取る」「彩る」義を共有する。


2017/08/11

字典「再」

「再」

釋義

甲骨文

残辞に一例みえるのみで、意味は不明。
  1. 允〼
    《合集》7660;典賓

金文

西周期の例はない。「二番目」「二回目」「ふたたび」の意味で用いられる。「閏再某月」は二回目の月(閏月)のことで、秦簡にも同用法が見られる。
  1. 数:二度、二回。二回目、二番目。
    隹(唯)廿又祀。
    𠫑羌鐘,《銘圖》15425-15429;戰早

    元年閏十二月丙午。
    元年閏矛,《銘圖》17668-17669;戰晩
  2. 副:ふたたび。かさねて。もう一度。
    尸(夷)用或敢[⿱再口](再)𢱭(拜)𩒨(稽)首。
    叔夷鎛,《銘圖》15829;春晩

    𬯔(陳)喜[⿱再口](再)立(涖)事歲。
    陳喜壺,《銘圖》12400;戰早

    奠(鄭)昜、𬯔(陳)𠭁(得)立(蒞)事歲。
    陳璋壺,《銘圖》12410-12411;戰中

楚簡

「ふたたび」「くりかえし」の意味で用いられる。《芮良夫毖》にみえる「再終」は二組からなる詩のこと[1]
  1. 数:二度、二回。二回目、二番目。
    内(芮)良夫乃[⿱乍又](作)䛑(毖)夂(終)。
    清華叁《芮良夫毖》2

    𫊟(吾)甬(用)[⿱乍又](作)(作)䛑(毖)夂(終)。
    清華叁《芮良夫毖》28
  2. 動:くり返す。ふたたびおこる。
    䆤(窮)達以旹(時),𫲪(幽)明不
    郭店《窮達以時》15
  3. 副:ふたたび。かさねて。もう一度。
    [⿰忄𠤕](疑)取
    郭店《語叢二》49

    𢘓(謀)亡(無)小大,而器不利。
    清華叁《芮良夫毖》26
  4. 「再三」:何度も。たびたび。
    大(太)子再三,肰(然)句(後)並聖(聽)之。
    上博二《昔者君老》1

    [⿰才匕](必)再三進夫﹦(大夫)而與之[⿸虍皆](偕)[⿱⿴囗者心](圖)。
    清華陸《鄭武夫人規孺子》1

釋形

甲骨文は残辞で文意は不明だが、後代の字形や甲骨文の「冓」「爯」の下部との比較から「再」と見られている。構意には定説がなく、不明。
春秋戦国時代には意符「二」を加えた字体や、羨符「口」を加えた字体が見られる。
秦代の字形は下部が「肉」に似るが、漢代には直線化された。説文小篆は明らかに漢隷の字形から作られたもので、秦篆とは異なる。
六朝楷書では中央縦画を下まで伸ばす字体が用いられたが、説文小篆を楷書化した字体が《干禄字書》の正体・開成石経の規範字体とされ、以降の字書に引き継がれた。さらに《字彙》では中央横画が短くなり(理由不明)、これが康煕字典体および現在の規範字体のもととなっている。

釋詞

待考。


2017/08/06

字典「宰」

「宰」

釋義

甲骨文

五期甲骨文に「宰丰」が数例見えるのみである。「宰」は職名、「丰」は人名である。
  1. 名:職官名。
    王曰刞大乙[⿱隹示]于白麓𥑿丰。
    《合集》35501;黄一

    王易(賜)丰。
    《合補》11299反;黄一

金文

職官名。主に人名の前につけて「宰某」の形で用いられる。特に周中晩期に多く見られる冊命儀礼においては補佐を行い、銘文では「宰某右某,入門,立中廷。」のような文章が決まり文句になっている。
  1. 名:職官名。
    王[⿱火女](光)甫貝五朋。
    宰甫卣,《銘圖》13303;商晩

    𣍧(胐)右乍(作)册吴,入門,立中廷。
    作册吴方彝蓋,《銘圖》13545;周中

    引右頌,入門,立中廷。
    頌壺,《銘圖》12451-12452;周晩

楚簡

楚簡においては「刀」を加えた異体字が多く用いられる。「宰尹」は《韓非子・八説》で料理人とされているが、楚簡ではそのような記述はみえない。
  1. 名:職官。
    八月[⿱丙口](丙)戌之日,[⿸宰刂](宰)𥎵受[⿱几日](幾)。
    包山《受幾》36

    季𬨤(桓)子史(使)中(仲)弓爲[⿸宰刃](宰)
    上博三《仲弓》1

    史(使)[⿱隹吕](雍)也從於[⿸宰刃](宰)夫之𨒥(後)。
    上博三《仲弓》1

  2. 「太宰」:職官名。王の側近。楚では地方官。
    大(太)𠹼(宰)之駵(騮)爲左驂。
    曾侯乙《乘馬》175

    七夫﹦(大夫)所[⿱歐巿]大(太)𠹼(宰)[⿰匹馬]﹦(匹馬)。
    曾侯乙《敺馬》210

    新都南陵大(太)宰䜌(欒)[⿸疒首](憂)。
    包山《疋獄》102

    [⿱𢽟貝]尹皆紿[⿰紿⿹𠃌一]丌(其)言以告大(太)[⿸宰刂](宰)
    上博四《柬大王泊旱》19

    五(伍)員爲吴大(太)[⿸宰刂](宰)
    清華貳《繫年》第十五章83

    奠(鄭)大(太)[⿸宰刂](宰)[⿰忄旂](欣)亦𨑓(起)𥛔(禍)於奠(鄭)。
    清華貳《繫年》第二十三章131

    楚恭(共)王又(有)𨚮(伯)州利(犁),以爲大(太)宰
    清華叁《良臣》11
  3. 「宰尹」:職官名。地方に配置され、治獄(裁判)に関わっている。
    𠹼(宰)尹臣之騏爲右[⿰馬𤰇](服)。
    曾侯乙《乘馬》154

    𠹼(宰)尹臣之黄爲右[⿰馬𤰇](服)。
    曾侯乙《乘馬》155

    以[⿲彳乃攵][⿸宰刂](宰)尹[⿰弓𠓥]與〼。
    葛陵《卜筮祭禱》甲三356

    福昜(陽)[⿸宰刂](宰)尹之州里公婁毛受[[⿱几日](幾)]。
    包山《受幾》37
  4. 「少宰尹」:職官名。宰尹の副職。
    䢿(鄢)[⿱宀邑]夫﹦(大夫)命少[⿸宰刂](宰)尹鄩𫌳。
    包山《集箸言》157

    䢿(鄢)少宰尹𫑜〈鄩〉𫌳以此[⿱竹𠱾](志)至(致)命。
    包山《集箸言》157反


釋形

「宀」と「䇂」に従う。「䇂」は「乂」の初文で、草を刈る鎌の象形[1]。「宰」はおそらく「䇂」に「宀」を加えた形声字(樂郊)。下部の「䇂」は後代に近形の「辛」と同形となった。
下部を「辛」として罪人と結びつける説があるが、誤りである。

釋詞

「宰」と「䇂(乂)」は{割断}義を共有する。
  • 乂,《説文》十二篇下《丿部》「芟艸也。」(266上)
  • 宰,《慧琳音義》卷十八《十輪經》第三卷音義引《考聲》「大也,理也,制斷也。」(816下)
また{治理}義を共有する。
  • 乂,《爾雅・釋詁》「治也。
  • 宰,《玉篇》卷十一《宀部》「治也,制也。」(209)

「宰」「䇂」「司」はしばしば互いに交替する。
  • 《説文》六篇上《木部》「梓,楸也。从木,宰省聲。榟,或不省。」(111上)
  • 《説文》十四篇下《辛部》「辭,說也。𤔲,籒文辭,从司。」(311上)、兮甲盤「王令甲政𬋹(司)成周亖(四)方責(積)。」(《銘圖》14539)
  • 《龍龕》卷四《肉部》去聲「𦛛,俗。䏤,古。𦞤,今。」(413)
したがって{宰}、{䇂}、{司}はおそらく同源詞である。「宰」は「䇂」声字と考えられる。
ただし、「宰」の声符である「䇂(乂)」と後代の「乂」とは音が異なっており、或いは「䇂(乂)」は異音同義の二詞同居字かもしれない。


2017/07/28

字典「子」

「子」

釋義

甲骨文

殷墟甲骨文において「子」は非常によく見られる字であるが、「幼児」「子供」の用法はそこまで多くない。最も多いのは、「子某」のような人名の前(あるいは後)につく用法である。これが具体的に何を表しているのかは諸説紛紛であるが、何らかの地位・役職・称号であるという説が多い。
  1. 名:こ。子女。息子あるいは娘。
    辛丑卜,㱿貞:帚(婦)好㞢(有)?二月。
     辛丑卜,亘貞。王占曰:好其㞢(有)。[⿰丨卩](孚)。
    《合集》94正;典賓

    帚(婦)好毋其㞢(有)
     帚(婦)好㞢(有)?二月。
    《合集》13927;典賓

    壬辰卜,㱿貞:帚(婦)良[其]㞢(有)
     貞:帚(婦)良[不]其
    《合集》13936正;典賓
  2. 名:こ。幼い動物。動物の子供。
    叀𩣫眔[⿲馬立犬]亡災?
    《合集》37514;黄一
  3. 名:称号の一種。人名の前や後につく。
    乙巳卜,[⿻大匚]:㞢(有)宋〼
    《合集》19921;𠂤大

    丁卯卜,爭貞:令效先于䀏?二月。
    《合集》3093;賓一

    丙寅卜,兄貞:□令甗䇂?十月。
    《合集》23536;出一
  4. 動:やしなう。育てる。養育する。
    戊辰卜,爭貞:勿[⿱至皀]帚(婦)[⿰女食]子?
    《合集》2783;賓三
十二支の1番目には「子」とは別の文字が使われている。
十二支の6番目として現れる字は字形が「子」に似ており後代には混用が見られるものの、初期の甲骨文では区別されている[1]。また、子組卜辞の主催者は「子」を自称しており、上記の「子某」と同じ意味と思われるが、字体は異なっている。
  1. 名:み。十二支の6番目。(用例略)
  2. 名:非王卜辞の主催者。
    甲申卜,貞:
    《合集》20857;婦女

    己亥,卜貞:我又(有)乎出?[⿰丨卩](孚)。
    《合集》21583;子組

    辛亥卜:曰:余丙速?
    《花東》475;花子

金文

周金文では「其子子孫孫萬年永寶用」の決まり文句が非常によく見られる。
  1. 名:こ。子女。息子あるいは娘。
    則尚(常)安永宕乃心,安永𧟟(襲)[⿹戈冬]身。
    [⿹戈冬]鼎,《銘圖》02489;周中

    虢宣公白乍(作)𬯚(尊)鼎。
    虢宣公子白鼎,《銘圖》02308;周晩

    余畢公之孫、郘(吕)白(伯)之
    郘𮮝鐘,《銘圖》15570-15582;春晩
  2. 名:男子の尊称。一般に姓の後につけるが、齊国では前後につける。
    不录(禄)嗌
    作册嗌卣,《銘圖》13340;周中

    吴季之子逞之兀(元)用鐱(劍)。
    吴季子之子逞劍,《銘圖》17950;春晩

    禾(和)
    子禾子釜,《銘圖》18818;戰早
  3. 名:称号の一種。族名・人名の前後につく。
    蝠。
    子蝠鼎,《銘圖》00470;商晩

    媚。
    子媚簋,《銘圖》03650;商晩

    雨。
    子雨觚,《銘圖》09316;商晩
  4. 名:族名。
    子觚,《銘圖》08887-08894;商晩

    父丁。
    子父丁爵,《銘圖》07818;商晩

    父乙。
    子父乙鼎,《銘圖》00776;周早
  5. 名:姓。また、人名用字。(用例略)
  6. 名:み。十二支の6番目。=巳 (用例略)
  7. 動:いつくしむ。慈愛する。=慈
    懿,父廼是子(慈)
    沈子也簋蓋,《銘圖》05384;周早
  8. 「子子孫孫」:子孫。あとの世代。「孫子」「子子孫」等とも。
    其萬年子﹦孫﹦其永寶用。
    郭伯捱簋,《銘圖》05203;周早

    子﹦孫﹦萬年永寶用。
    庚贏卣,《銘圖》13337-13338;周中

    逨㽙(畯)臣天子﹦孫﹦永寶用亯(享)。
    逨盤,《銘圖》14543;周晩
  9. 「子𠇷(姓)」:子孫。
    𬕝﹦(肅肅)義政,[⿰亻⿱王子](保)𫊣(吾)子𠇷(姓)。
    𦅫鎛,《銘圖》15828;春中
なお、十二支の1番目には「子」とは別の文字が使われている。

楚簡

楚簡では人名用字での例が多い。また、十二支の1番目として用いられ、6番目には用いられない。
  1. 名:こ。子女。息子あるいは娘。
    𢝫(喜)之庚一夫,凥(處)郢里,司馬徒箸(書)之。
    包山《集箸》7

    古(故)夫夫,婦婦,父父,子子,君君,臣臣,六者客(各)行其戠(職)。
    郭店《六德》23

    逆上汌(均)水,見盤庚之,凥(處)于方山。
    清華壹《楚居》1
  2. 名:尊称。姓の後につける。(用例略)
    また、官職名の前につける。
    司馬。
    包山《集箸言》145

    陵尹。
    包山《集箸》156

    左尹。
    包山《祭禱》224
  3. 名:孔子。
    曰:又(有)𬪇(國)者章好章亞(惡),以視民厚,則民青(情)不𥾐(忒)。
    郭店《緇衣》2

    曰:又(有)國者章𡥆(好)章惡,以眂(視)民厚,則民情不弋(忒)。
    上博一《緇衣》1
  4. 名:ね。十二支の1番目。(用例略)
  5. 名:いつくしみ。慈愛。=慈
    羕(養)心於子(慈)俍(良),忠信日嗌(益)而不自智(知)也。
    郭店《尊德義》21

    子(慈)生於眚(性),易生於子(慈)
    郭店《語叢二》23
  6. 名:めす。雌牛。また、雌の家畜。=牸
    大首之子(牸)䮑馬爲右[⿰馬𤰇]。
    曾侯乙《乘馬》147

    司馬上子(牸)爲左驂。
    曾侯乙《乘馬》151

    建巨之子(牸)爲右驂。
    曾侯乙《乘馬》172
  7. 「子女」:むすめ。美しい女性。
    母(毋)㤅(愛)貨資子女。
    上博四《曹沫之陣》2
  8. 「子犯」「子餘」「子産」「子儀」など:人名。(用例略)
    「子夏」「子羔」「子貢」「子羽」「子路」:人名。みな孔子の弟子。
    子[⿱日它](夏)曰:“敢[⿱宀𦖞](問)可(何)胃(謂)五至?”
    上博二《民之父母》2

    子羔曰:“可(何)古(故)以𠭁(得)帝?”
    上博二《子羔》1

    子贛(貢)曰:“否。”
    上博二《魯邦大旱》3

    子羽𦖞(問)於子贛(貢)曰:“中(仲)尼與𫊟(吾)子産䈞(孰)臤(賢)?”
    上博五《君子爲禮》11

    子𮞑(路)𨓹(往)[⿸虎口](乎)子。
    上博五《弟子問》19

釋形

大きく分けてABCDの四種の字体がある。うちBとCはかなり早くに区別が失われた。四種とも小さい子供の象形と考えられている。ただし、AとDが{子供・幼児}の意味に用いられた例はないことには注意しなければならない。
【殷墟甲骨文】
A:{十二支の第一位(ね)}に用いられる。A3が最も象形的な形で、A2やA1はそれを簡単にした形だと思われる。賓組や歷組ではA1の字体が受け継がれたが、後代の何組や黄組では複雑な字体に逆戻りしている。
BC:𠂤組甲骨文では{十二支の第六位(み)}にBを、{子供・幼児}にCを用いており、「子」に従う字もCの形であった。しかし後に混用され、子組ではほぼ全てB、賓組ではほぼ全てC、歷組ではB・Cの両方を区別なく用いている。最終的に黄組ではBが主に用いられている。
D:武丁期にみられる人名である。説文古文「㜽」と近形であることから、「子」の異体字とされている。ただし、この字は両周以降には見られないことから、説文古文「㜽」と直接の関係があるかどうかは慎重にならなければならない。
【西周金文】
A:甲骨文の字形よりさらに複雑な字体が用いられている。
BC:周代には字形変化があまりないが、時代が下るにつれて若干両腕が上がってきたり、上部が丸みのある四角形から後の三角形に近づいてきている。
【戦国文字】
戰國文字は多く上部が三角形になっている。素早く書いたものには上部三角形の一辺と下部縦画を一画とした字形が見られる。
晋系文字は腕を二画で書く特徴があり、清華叁《良臣》はこの特徴をよく受け継いでいる。また上博五《季庚子問於孔子》や、清華貳《繫年》の一部にもこの字体が見られる。
秦系文字は両腕を曲げた形が多い。
【秦漢】
秦隷でほぼ現在と同形となっている。篆書の面影を残した腕を曲げた字体も少数見られるが、後代には廃れた。

《康熙字典》では説文籀文を楷書化した字が多く収録されている。「𩐍」は誤って「自」の異体字とされているが、これも「子」の説文籀文を楷書化した字である[2]。また「𣕓」は誤って「子」の異体字とされているが、別字である。

釋詞

「子」声字は「子供」「小さい」「養育」義を共有する。
  • 字,《説文》十四篇下《子部》「乳也。」(310上),《集韻》平聲《之韻》津之切「養也。」(53)
  • 孜,《廣韻》平聲《之韻》子之切「力篤愛也。」(63)
  • 秄,《説文》七篇上《禾部》「壅禾本。」(145上)《繫傳》「秄之言字也,養之也。」(142上)
「茲」「絲」声字は音義とも近く、また通仮例も多く、同源である。


2017/07/22

字典「甾」

「甾」

釋義

甲骨文

殷墟甲骨文における「甾」とされている字は黄組に数例見えるのみである。
  1. 名:人名用字。
    〼妥余一人□,余其比田正□□盂方〼
    《合補》11242;黄二

    〼,余其比發戔,亡又〼
    《合集》36347;黄二

    〼發戔亡〼
    《合集》36348;黄二

金文

金文における「甾」とされている字は二例のみである。
  1. 名:人名。
    乍(作)父己寶𬯚(尊)彝,南宫。
    甾觶,《銘圖》10646;周中
  2. 名:器の一種。=鼒
    子䧅□之孫〼行(鼒)。
    子䧅□之孫鼎,《銘圖》01744;春秋

秦簡

秦簡における「甾」とされている字は二例のみである。
  1. 名:人名。
    等非故縱弗論殹,它如劾。
    里耶秦簡8-1107

    等當贖耐,是即敬等縱弗論殹。
    里耶秦簡8-1133

釋形

「甾」字の用例は少ない。字形は「其」に似ており、《六書故》卷二十九「𠙹,竹器也。」とある通り竹製の器物の一種の象形と考えられる(季旭昇)。《説文》十二篇下《甾部》「東楚名缶曰𠙹。」(269上)や子䧅□之孫鼎における用法などは引伸義である。
字書類では説文小篆を楷書化した「𠙹」の字体が主に用いられる。また《説文》では「菑」字の古文として「甾」が掲載されており、後代の字書類もこれに従っている。

古くはA・Bがその字形から「甾」かつ「西」であり、両字は同源分化字と考えられていた(李孝定[1]等)。ただし、形が似ていること以外にA・Bを同一視する根拠はない。また于省吾[2]はB・Cを「甾」としたが、陳剣[3]によってCは「由」であると修正された。蘇建洲[4]は「甾」に従う字との字形比較からBを「甾」とした。したがって現在はA=「西」、B=「甾」、C=「由」とするのが通説である。

釋詞

「甾」声字は「黒色」「死」義を共有し、おそらく{災}と同源である。
  • 菑,《詩・大雅・皇矣》「作之屏之,其菑其翳。」 毛傳「木立死曰菑。」,《詩・小雅・采芑》「薄言采芑,于彼新田,于此菑畝。」孔穎達疏「菑者,災也。
  • 淄,《史記・夏本紀》「堣夷既略,濰、淄其道。」張守節正義引《括地志》「俗傳云:禹理水功畢,土石黑,數里之中波若漆,故謂之淄水也。
  • 椔,《爾雅・釋木》「立死,椔。」,《廣韻》平聲《之韻》側持切「木立死。」(62)
  • 䅔,《玉篇》卷十五《禾部》「禾死也。」(290)
  • 緇,《説文》十三篇《糸部》「帛黑色也。」(275上)
  • 輜,《釋名・釋車》「輜車,載輜重、臥息其中之車也。」,《集韻》平聲《之韻》莊持切引《字林》「載衣物車,前後皆蔽,若今庫車。」(51)
  • 鯔,《本草綱目・鱗之三》「時珍曰:鯔,色緇黑,故名。


2017/07/16

字典「來」

「來」

釋義

甲骨文

「来る」の意味に用いられる。その対象は人だけでなく、敵国の攻撃・天候・災害など多岐にわたる。対象によって「~來」と「來~」の形がある。
「來+時間詞」の形で「次にやってくるその時間」を表す用法がある。「来年」「来週」などと同用法である。殷墟甲骨文では「來+干支」の形が多い。
  1. 動:くる。きたる。遠くから近くにやってくる。
    《花東》481;花二
    ①才(在)𫦎(割)自斝?
    《合集》1027正;賓一
    ②己未卜,㱿貞:缶其見王?一月。
     己未卜,㱿貞:缶不其見王?
    《合集》2763反;典賓
    ③帚井
    《合集》36509;黄一
    ④隹(惟)王正(征)盂方白(伯)炎。
  2. 動:もたらす。貢納する。
    《合集》9200反;賓一
    ①我卅。
    《合集》152反;賓一
    ②奠十。
    《合集》945正;賓一
    ③貞:古犬?
     古不其犬?
     古馬?
     不其馬?
  3. 形:将来の。日時・時間を表す言葉をあとにおいて「次に来る~」を表す。
    《合集》6478;典賓
    ①貞:乙亥㞢(侑)于祖乙?
    《合集》12466正;典賓
    ②貞:乙酉其雨?
     貞:庚寅其雨?
     貞:庚寅不其雨?
    《村中南》403.2;無一
    ③于辛巳𫹉,受禾?
  4. 名:むぎ。小麦。
    《合集》914;賓一
    ①辛亥卜,貞:[咸]穫
  5. 名:地名。
    《合集》20907;𠂤小
    ①己未卜:今日不雨?才(在)
    《合集》19471;賓三
    ②貞:从至于皿?

金文

西周金文では多くの場合後ろに他の動詞をくっつけて用いられる。直訳すると「来て~する」「~しにくる」或いは「~してくる」となるが、実際は文中においてあまり意味をなさない。
  1. 動:くる。きたる。遠くから近くにやってくる。
    录簋,《銘圖》05115;周中
    ①白(伯)[⿰呇隹](雝)父自㝬。
    動:きて~する。~しにくる。他の動詞をあとに続けて用いる。
    小臣艅尊,《銘圖》11785;商晩
    ②隹(唯)王正(征)人(夷)方。
    厚趠鼎,《銘圖》02352;周早
    ③隹(唯)王各(格)于西周年。
    史牆盤,《銘圖》14541;周中
    ④𣁋(微)史剌(烈)且(祖),廼見武王。
    五年琱生簋,《銘圖》05340;周晩
    ⑤琱生又(有)事,召合事。
  2. 形:将来の。日時・時間を表す言葉をあとにおいて「次に来る~」を表す。
    「來歲」:来年。
    曶鼎,《銘圖》02515;周中
    ①[若]來歲弗賞(償),則付卌秭。
  3. 名:人名用字。
    邾來隹鼎,《銘圖》02885;春早
    ①鼄(邾)隹乍(作)鼎。
  4. 「來歸」:帰ってくる。
    不𡢁簋,《銘圖》05387;周晩
    ①余來歸獻禽(擒)。

楚簡

九店楚簡《簿》では「檐」「⿰禾坐」「⿰禾癸」などともに、「⿱崔田」を数える量詞として用いられている。「⿱崔田」は「㽯(畦)」の異体字と考えられている。
卜筮簡では前辞に「來歲」が用いられている。
なお、楚簡では主に「⿱來止」「逨」の字体が用いられる。上博三《周易》では「⿰木⿱來止」「⿱萊止」も用いられているが、いずれも今本では「來」に作る。
  1. 動:くる。きたる。遠くから近くにやってくる。
    郭店《語叢四》2
    ①往言[⿰昜刂](傷)人,[⿱來止](來)言[⿰昜刂](傷)𠮯(己)。
    包山《集箸言》132反
    ②[⿱衰刖]尹傑[⿰馬𡉣](馹)從郢以此等(志)[⿱來止](來)
    上博三《周易・比》9
    ③不寍(寧)方逨(來),𨒥(後)夫凶。
    清華貳《繋年》第五章25
    ④君[⿱來止](來)伐我〓(我,我)𨟻(將)求𫻲(救)於[⿰㣇阝](蔡),君[⿱女一](焉)敗之。
  2. 名:卦の一つ。「震」の別名。=釐
    清華肆《筮法・四季吉凶・春》37
    [⿱來止](來)巽大吉。
    清華肆《筮法・四季吉凶・夏》37
    [⿱來止](來)巽少(小)吉。
    清華肆《筮法・四季吉凶・冬》38
    [⿱來止](來)巽大凶。
  3. 名:詩の篇題。《詩經・周頌》に収められている。=賚
    郭店《性自命出》25
    ①雚(觀)《[⿱來止](賚)》、《武》,則齊女(如)也斯[⿱乍又](作)。
    郭店《性自命出》28
    《[⿱來止](賚)》、《武》樂取,《卲(韶)》、《[⿹暊止](夏)》樂情。
    上博一《性情論》15
    ③[⿱雚目](觀)《[⿱來止](賚)》、《武》,則[⿱齊心](齊)女(如)也斯[⿱乍又](作)。
  4. 名:地名用字。
    州来国は春秋時代の小国。
    清華貳《繋年》第五章25
    ①五(伍)雞𨒫(將)吴人以回(圍)州[⿱來止](來)
    清華貳《繋年》第十五章82
    ②吴縵(洩)用(庸)以𠂤(師)逆[⿰㣇阝](蔡)卲(昭)侯,居于州[⿱來止](來)
    棘津は黄河の渡しの一つ。
    郭店《窮達以時》4-5
    ③郘(呂)𡔞(望)爲牂(臧)[⿱來止](棘)𣿕(津),戰(守)監門[⿱來止](棘)地。
  5. 量:「⿱崔田」に対して用いられる数量単位。
    九店《簿》1
    ①[⿱崔田]二[⿰禾坐]又五,敔[⿰禾毋]之五檐(擔)。
    九店《簿》3
    ②[⿱崔田]五[⿰禾癸]又五,敔[⿰禾毋]之十檐(擔)一檐(擔)。
    九店《簿》4
    ③……方七,麇一,[⿱崔田]五[⿰禾癸]又六,[⿱崔田]四……
  6. 「來各(格)」:やってくる。
    清華壹《耆夜》8
    ①不(丕)㬎(顯)逨(來)各(格)[⿱金心](歆)氒(厥)𬪭(禋)明(盟)。
    清華叁《説命中》2
    來各(格)女(汝)敚(説),聖(聽)戒朕言,[⿰氵軫](慎)之于乃心。
  7. 「來歸」:帰ってくる。
    九店《日書・告武夷》44
    ①囟(思)某逨(來)䢜(歸)飤(食)故□。
  8. 「來𫻴(歲)」:来年。
    天星觀《卜筮祭禱》9-1
    ①從十月以至[⿱來止](來)𫻴(歲)之十月。
    葛陵《卜筮祭禱》甲三117、120
    ②[⿱夜示](𬒵)之月以至[⿱來止](來)𫻴(歲)之[⿹暊虫](夏)[⿱夜示](𬒵)。
    葛陵《卜筮祭禱》乙一19
    ③自[⿹暊虫](夏)[⿱夜示](𬒵)之月以至[⿱來止](來)𫻴(歲)[⿹暊虫](夏)[⿱夜示](𬒵)。

釋形

麦の象形で、「麥」の初文。しかし麦を意味する用例は少なく、ほとんどが到来の意味に用いられている。
賓組甲骨文では上部の短横画を省略した形を用いる。無名組では中部の画を反転させた形が見られる。黄組には縦画の上部を曲げた形が見られる。戦国楚簡の文字は縦画下部に短横画を加えたものが多い。
戦国時代の燕・晋・楚国では意符として「止」「彳」「辵」を加えた字体が見られる。北魏には「走」を加えた字体も見られる。
後漢以降「來」より「来」の字体が用いられたが、開成石經では「來」の字体が用いられ、そのまま「來」が康熙字典体となっている。

釋詞

{麦}が本義で、{到来}は仮借義とするのが一般的であるが、麦が外来植物であることからの引伸義とする説もある。



2017/07/02

字典「里」

「里」

釋義

金文

西周金文では周王朝の治めるある範囲の土地を指し、管理者は「里君」と呼ばれた。
  1. 名:国有の一定範囲の土地。
    召圜器,《銘圖》19255;周早
    ①休王自㝅事(使)賞畢土方五十
    九年衛鼎,《銘圖》02496;周中
    ①廼(乃)舍(捨)裘衛林𡥨
    大簋蓋,《銘圖》05345;周晩
    ②余既易(錫)大乃
    大簋蓋,《銘圖》05345;周晩
    ③豖㠯(以)𬑪(睽)[⿰舟頁](履)大易(錫)
    また齊国では「○○里」を地名として用いる。
    成陽辛城里戈,《銘圖》16929-16930;春晩
    ④成𪤝(陽)辛城里鈛(戈)。
    平陽高馬里戈,《銘圖》16931;春晩
    ④平𪤝(陽)高馬里鈛(戈)。
  2. 名:人名あるいは地名用字。
    今永里倉鼎,《銘圖》01346;戰晩
    ①今永倉。
  3. 名:うら。衣服の裏地。=裏
    伯振鼎,《銘圖》02480;周中
    ①冟(冪)𧙀里(裏)幽。
  4. 量:長さの単位。一里は三百歩。
    中山王鼎,《銘圖》02517;戰中
    ①方𬣏(數)百里,[⿰柬刂](列)城𬣏(數)十。
  5. 「里君」:里の統治・管理者。
    夨令方彝,《銘圖》13548;周早
    ①眔卿𬀈(事)寮、眔者(諸)尹、眔里君、眔百工、眔者(諸)𥎦(侯)。
    史頌簋,《銘圖》05259-05267;周晩
    ②[⿰氵⿴囗𬑔](姻)友、里君、百生(姓)。
  6. 「里人」:「里君」と同義。
    𬹜簋,《銘圖》05242;周晩
    ①命女(汝)𤔲(司)成周里人眔者(諸)𥎦(侯)、大亞,𡀚(訊)訟罰。

楚簡

包山簡や新蔡葛陵簡では行政区での用法が、郭店簡では「理」としての用法が多く見られる。
  1. 名:行政区域の単位。「○○里」で地名を表す用法もある。
    包山《疋獄》92
    ①𨛡(宛)[⿱蔯土](陳)午之人藍訟登(鄧)[⿱命貝](令)尹之人苛[⿰畀⿱黽甘]。
    上博六《天子建州》甲1
    ②夫〓(大夫)建之㠯(以)
    上博六《天子建州》乙1
    ③夫〓(大夫)建之㠯(以)
  2. 名:ことわり。道理。=理
    郭店《成之聞之》31
    ①天[⿱夂止](降)大[⿱尚示](常),以里(理)人侖(倫)。
  3. 名:姓。里克は晋の将軍。
    清華貳《繫年》第六章32
    ①亓(其)夫〓(大夫)之克乃殺奚𬁼(齊),而立亓(其)弟悼子,之克或(又)殺悼子。
  4. 動:おさめる。理する。整える。ただす。=理
    郭店《性自命出》17
    里(理)亓(其)青(情)而出内(入)之。
    上博一《性情論》10
    里(理)亓(其)情而出内(入)之。
    郭店《語叢一》32
    ③善里(理)而句(後)樂生。
    郭店《語叢一》54
    ④臤(賢)者能里(理)之。
  5. 量:長さの単位。
    上博二《容成氏》7
    ①於是虖(乎)方百之𫲹(中)。
    上博四《柬大王泊旱》13
    ②方若肰(然)
    上博七《凡物流形》甲15
    ③坐而思之,每(謀)於千
  6. 「里公」:里の統治・管理を行う官吏。
    包山《受幾》22
    ①䢵(鄖)司馬之州加公李瑞、里公[⿰隓阝](隋)[⿱目又](得)受[⿱几日](幾)。
    包山《所屬》162
    ②[⿰亙阝](期)思公之州里公[⿸虍㕣](虐)。
    包山《集箸言》122
    里公邞眚(省)、士尹紬[⿱𠦉診](慎)[⿱反止](返)孑。

釋形

「田」と「土」に従う。人の住む場所を表す。その字形は先秦からほとんど変わっていない。

釋詞

「里」声字は「内側」「内にしまう」「隠す」義を共有する。

  • 裏,《説文》八篇上《衣部》「衣内也。」(168上)
  • 貍,《説文》九篇下《豸部》「伏獸。」(196上)
  • 埋、薶,《廣韻》平聲《皆韻》莫皆切「瘞也,藏也。」(95)

また水底に生息する魚を「鯉」と称する。人をより集めたのが「里」である。
「里」の居住の義から「理」のおさめるの義が派生した。

裏の縫い目・里の道・鯉の鱗紋などから「みち」が原義であるとする説もある。


2017/06/28

字典「迺(廼)」

「迺(廼)」

釋義

甲骨文

前後をつなぐ副詞として用いられる。
  1. 副:すなわち。そして。そこで。=乃
    《合集》19921;𠂤小
    ①庚辰卜,王:祝父辛羊豕,𫹉父……
    《合集》28609;無一
    ②于壬王田,亡𢦔(災)?
  2. 名:地名。
    《合集》8270;賓一
    ①……步于
    《合集》33159;歷一
    ②王㞷(往)于

金文

前後を接続する副詞(あるいは接続詞)として用いられる。前後の句同士は因果関係や、単純な時間の前後、仮定と結果など多岐にわたる。
  1. 副:すなわち。そして。そこで。
    接:すなわち。そして。そこで。
    師旂鼎,《銘圖》02462;周中
    ①才(在)𦮘(艿),白(伯)懋父罰得、𫷢、古三百寽(鋝)。
    五祀衛鼎,《銘圖》02497;周中
    ②正廼𡀚(訊)厲曰:“女(汝)賈田不(否)?”厲許,曰:“余審賈田五田。”
    散氏盤,《銘圖》14542;周晩
    ③用夨[⿰戈業](業)散邑,即散用田。

楚簡

接続用法のほか固有名詞としても用いられている。
  1. 副:すなわち。そして。また。さらに。=乃
    上博一《周易・革》29
    ①又(有)孚不終,乃𤔔(乃)啐(萃)。
    上博一《周易・革》47
    ②改(巳)日(乃)孚,元羕(享)貞,利貞,𠰔(悔)亡。
  2. 副:すなわち。そして。そこで。続いて。=乃
    清華壹《程寤》1
    [⿱少子]〓(小子)發取周廷杍(梓)梪(樹)于氒(厥)𨳿(間)。
    清華壹《皇門》3
    方(旁)救(求)巽(選)睪(擇)元武聖夫,𦟤(羞)于王所。
    清華叁《説命上》3
    ③王[⿰亻𧧈] (訊)敚(説)曰:“帝殹(繄)爾以畀[⿱余口](余),殹(抑)非?”
    清華伍《厚父》3
    ④才(在)[⿹暊又](夏)之𣂟(哲)王,嚴[⿰礻寅]畏皇天上帝之命。
  3. 「又廼」:古国名。=有娀
    上博二《子羔》10
    ①禼(契)之母,又(有)廼(娀)是(氏)之女也。

釋形

甲骨文は「西」あるいは「鹵」と凵形あるいは「口」に従い、多くの字体が見られる。仮借の用法しかないので何を表しているかは定かではない。上部は塩粒で下部は皿(高鴻縉)、上部は容器で下部は敷物(朱方圃)、といった説が代表的ではあるがいずれも根拠に乏しい。
周晩期に「卣」と同化して上部に横画が追加された。下部の凵形の部品は戦国時代には𠃊形となり、後漢代に草書の「辶」と同形化し、楷書で「辶」あるいは「廴」に変化した。
説文古文の「𠨅」は先秦に用例がなく、誤りと思われる。

釋詞

上述のように、接続用法は仮借と思われ、本義は不明である。


字典「乃」

「乃」

釋義

甲骨文

二人称代詞として用いられるが、主語や目的語にはならず、連体修飾(領格・属格)として用いられる。また「迺」と同様に接続詞的な副詞として前後の句をつなぐ用法もある。
  1. 代:なんじの。あなたの。
    《合集》3297正;典賓
    ①戊戌卜,㱿貞。王曰:𥎦豹逸,余不爾其合,㠯史(使)歸。
    《合集》34189;歷組
    ②庚辰卜:于卜土?
  2. 副:すなわち。そして。そこで。=迺
    《合集》32833;歷二
    ① [辛]亥貞:王令○㠯子方,奠于并?
    《合集》31199;無一
    ②翌日庚其𣏮,雩,𠨘至來庚亡大雨?

金文

甲骨文同様に連体修飾の二人称代詞として用いられる。西周中晩期には「乃」を主語として用いる例や、指示代詞としての用法が数例見られる。
接続用法では「迺」と同一視されることが多いが、その語法には若干の違いがある。
  1. 代:なんじの。あなたの。祖先を修飾する用法が多い。
    師虎簋,《銘圖》05371;周中
    ①𬲏(載)先王既令(命)𫨶(祖)考事。
    班簋,《銘圖》05401;周中
    ②㠯(以)𠂤(師)右比毛父。
    逆鐘,《銘圖》15193;周晩
    ③勿灋(廢)朕命,母(毋)㒸(墜)政。
  2. 代:なんじ。あなた。
    縣妀簋,《銘圖》05314;周中
    任縣白(伯)室。
    牧簋,《銘圖》05403;周中
    毌政事,母(毋)敢不尹人不中不井(型)。
    𠑇匜,《銘圖》15004;周中
    可(苛)湛(勘)。女(汝)敢㠯(以)乃師訟。
  3. 代:この。その。「申就乃命」の用法が多い。
    牧簋,《銘圖》05403;周中
    ①今余隹(唯)𤕌(申)𫢁(就)命。
    牧簋,《銘圖》05403;周中
    ②𩁹𡀚(訊)庶右粦(鄰),母(毋)敢不明不中不井(型)。
    曶鼎,《銘圖》02515;周中
    ③求人,乃弗得,女(汝)匡罰大。
  4. 副:すなわち。そして。そこで。
    接:すなわち。そして。そこで。
    九年衛鼎,《銘圖》02496;周中
    ①履付裘衛林𡥨里,則成夆(封)亖(四)夆(封)。
    鄂侯馭方鼎,《銘圖》02464;周晩
    ②噩(鄂)𥎦(侯)馭方內(納)壺于王,祼之。
    遟父鐘,《銘圖》15297;周晩
    ③用昭乃穆穆不(丕)顯龍(寵)光,用𣄨(祈)匃多福。
  5. 副:すなわち。そうしてはじめて。そこでやっと。
    新郪虎符,《銘圖》19176;戰晩
    ①[必]會王符,敢行之。
  6. 接:もし。仮に~ならば。
    令鼎,《銘圖》02451;周早
    ①令眔(暨)奮,克至,余𠀠(其)舍(捨)女(汝)臣十家。
    曶鼎,《銘圖》02515;周中
    ②求乃人,弗得,女(汝)匡罰大。
  7. 人名用字。
    乃𪺡子鼎,《銘圖》02044;周早
    𪺡子乍(作)氒(厥)文考寶𬯚(尊)彝。
    乃子克鼎,《銘圖》02322;周早
    ②𫨸(矧)辛白(伯)蔑子克𤯍(懋)。

楚簡


  1. 代:なんじの。あなたの。
    郭店《緇衣》29
    ①《康[⿱言廾](誥)》員(云):“敬明罰。”
    上博一《緇衣》15
    ②《康[⿱言廾](誥)》員(云):“敬明罰。”
    清華壹《祭公之顧命》8
    ③愻(遜)惜(措)心,𦘔(盡)𡧛(付)畀余一人。
  2. 代:なんじ。あなた。
    上博三《彭祖》1
    ①休才(哉),𨟻(將)多昏(問)因由,乃不[⿺辶⿱止㚔](失)厇(度)。
  3. 副:すなわち。まさに。~である。
    郭店《老子乙》16
    ①攸(修)之身,丌(其)惪(德)貞。
    郭店《老子乙》17
    ②攸(修)之向(鄉),其惪(德)長。攸(修)之邦,其惪(德)奉(豐)。
  4. 副:すなわち。そして。そこで。
    上博二《容成氏》29
    ①咎(皋)𡍒(陶)既已受命,𠓥(辨)侌(陰)昜(陽)之[⿱既火](氣)。
    上博五《姑成家父》10
    ②參(三)[⿰土丯](郤)既亡,公家溺(弱),鑾(欒)箸(書)弋(弒)[⿰⿻木𦥑攵](厲)公。
    清華貳《繋年》第一章4
    ③立丗〓(三十)又九年,戎大敗周𠂤(師)于千[⿱母田](畝)。
    清華貳《繋年》第六章31
    ④欲亓(其)子奚𬁼(齊)之爲君也,[⿰言⿱虫虫](讒)大(太)子龍(共)君而殺之。
  5. 副:すなわち。すでに。過去や完了を表す。
    上博二《容成氏》17
    ①[⿱允𪢾](舜)老,視不明,聖(聽)不[⿰耳兇](聰)。

釋形

極めて単純な形で、字義も仮借と考えられるため、解釈は難しい。
「繩」の初文で縄の象形(朱芳圃、何琳儀)、「奶」の初文で女性の乳の象形(郭沬若、徐中舒)の二説が代表的であるが、いずれも根拠に乏しい。
説文籀文の「𠄕」は先秦に用例がなく、誤りと考えられる。

釋詞

「乃」のほか二人称代詞に用いられる「女(汝)」「爾」「而」などはいずれも近音で同源詞と思われる。


2017/06/15

字典「㠯(以)」

「㠯」

釋義

甲骨文

殷代における「㠯(以)」字の用法は広いが、おおむね現在と同様の意味である。
  1. 動:もちいる。 ひきいる。
    前:もって。~によって。~をひきいて。
    《合集》31977;歷二
    ①辛亥,貞: [⿱匕鬯]㠯(以)衆灷,受又(佑)?
    《合集》35356;黄二
    ②乙丑卜,貞:王其又升于文武帝裸,其㠯(以)羌,其五人正,王受又〓(有佑)?
  2. 動:もたらす。もってくる。献上する。
    《合集》33191;歷二
    ①癸亥,貞:厃方㠯(以)牛,其登于來甲申?
    《合集》93正;賓一
    ②己丑卜,㱿貞:即芻,其五百隹,六?
  3. 動:祭祀名。 
  4. 《合集》32848;歷二
    ①辛巳,貞:㠯(以)伊示?
    《合集》32543;歷二
    ②庚寅,貞:王米于囧㠯(以)祖乙。
  5. 接:および。並びに。
    《合集》21562;子組
    ①庚辰,令彖隹來豕㠯(以)龜二,若令?
    《合集》33278;歷二
    ②辛酉,貞:王令○㠯(以)子方奠于并。

金文

金文における「㠯(以)」字の用法はとても広く、分類の難しい用例もある。
  1. 動:ひきいる。引き連れる。
    小子[⿱夆囧]卣,《銘圖》13326;商晩
    ①子令小子[⿱夆囧]㠯(以)人于堇。
    小臣𬣆簋,《銘圖》05269-05270;周早
    ②白(伯)懋父㠯(以)殷八𠂤(師)征東尸(夷)。
    師訇簋,《銘圖》05402;周晩
    ③率㠯(以)乃友干(捍)䓊(禦)王身。
  2. 前:もって。~で。~によって。
    鼓䍙簋,《銘圖》04988;周早
    ①王令東宮追㠯(以)六𠂤(師)之年。
    衛姒鬲,《銘圖》02802;周晩
    ②衛㚶(姒)乍(作)鬲,㠯(以)從永征。
    曾伯漆簠,《銘圖》05980;春早
    ③余用自乍(作)[⿺辶旅](旅)𠤳(簠), 㠯(以)㠯(以)行,用盛稻粱。
  3. 前:もって。~によって。~にもとづいて。「是以」
    虢季子白盤,《銘圖》14538;周晩
    ①折首五百,執訊五十,是㠯(以)先行。
    中山王鼎,《銘圖》02517;戰中
    ②氏(是)㠯(以)賜之氒(厥)命。
  4. 前:もって。~をひきいて。ともに。=與
    麥尊,《銘圖》11820;周早
    ①王㠯(以)𥎦(侯)内(入)于𡨦(寢)。
    虢仲盨蓋,《銘圖》05623;周晩
    ②虢中(仲)㠯(以)王南征,伐南淮尸(夷)。
    食仲走父盨,《銘圖》05616;周晩
    ③走父㠯(以)其子〓孫〓寶用。
  5. 前:もって。~を。~に対して。
    師旂鼎,《銘圖》02462;周中
    ①吏(使)氒(厥)友引㠯(以)告于白(伯)懋父。
    曶鼎,《銘圖》02515;周中
    㠯(以)匡季告東宮。
    𠑇匜,《銘圖》15004;周中
    ③乃師或㠯(以)女(汝)告。
  6. 接:もって。そして。それで。
    善夫山鼎,《銘圖》02490;周晩
    ①受册,佩㠯(以)出。
    晋侯蘇鐘,《銘圖》15307-15308;周晩
    ②𩵦(蘇)𢱭(拜)𩒨(稽)首,受駒㠯(以)出。
    中山王鼎,《銘圖》02517;戰中
    ③含(今)𫊣(吾)老賈,親率曑(三)軍之眾,㠯(以)征不宜(義)之邦。
  7. 接:および。並びに。=與
    夨令尊,《銘圖》11821;周早
    ①爽𬢚(左)右于乃寮㠯(以)乃友事。
    大克鼎,《銘圖》02513;周中
    ②田于[⿰⿱田山夋](峻),㠯(以)氒(厥)臣妾。
    大簋蓋,《銘圖》05345;周晩
    ③余弗敢𫿣(吝), 豖㠯(以)𬑪(睽)[⿰舟頁](履)大易(錫)里。
  8. 助:場所や時間の範囲を示す。のみ。
    散氏盤,《銘圖》14542;周晩
    ①眉(堳)自𬉄(瀗)涉㠯(以)南,至于大沽(湖)。
    新郪虎符,《銘圖》19176;戰晩
    ②用兵五十人㠯(以)上,[必]會王符。

楚簡

用例が多く、用法も広い。代表的なものを示す。
  1. 前:もって。~で。~によって。
    包山《集箸言》144
    ①小人信㠯(以)刀自㦹(傷)。
    郭店《老子甲》3
    ②其才(在)民上也,㠯(以)言下之。
    清華貳《繋年》第十一章59
    㠯(以)女子與兵車百𨌤(乘)。
  2. 前:もって。~によって。から。
    包山《疋獄》99
    㠯(以)亓(其)反(叛)官,自䜴(屬)於新大[⿸厂⿰飠攵](廐)之古(故)。
    上博七《鄭子家喪》甲本6
    㠯(以)子家之古(故)。
    清華貳《繋年》第十八章103
    ③至今齊人㠯(以)不服于晉。
  3. 前:もって。~のときに。時間を表す。
    包山《疋獄》90
    㠯(以)甘𠤳(固)之𫻴(歲)。
    包山《集箸言》132
    㠯(以)宋客盛公[⿰畀臱](邊)之𫻴(歲)[⿰⿱井田刃](荆)𫵖(夷)之月癸巳之日。
    包山《集箸言》145反
    㠯(以)八月甲戌之日。
  4. 前:もって。~をひきいて。ともに。=與
    包山《集箸》2
    ①魯昜(陽)公㠯(以)楚帀(師)𨒥(後)𩫨(城)奠(鄭)之𫻴(歲)。
    上博四《昭王毀室》5
    ②卒㠯(以)夫〓(大夫)㱃〓(飲酒)於坪澫。
    清華貳《繋年》第十九章106
    ③吴縵(洩)用(庸)㠯(以)帀(師)逆[⿰㣇阝](蔡)卲(昭)侯。
  5. 前:もって。~を。~に対して。
    包山《集箸》159
    ①罼(畢)紳命㠯(以)[⿰𪰊頁](夏)[⿺辶各](路)史、[⿺辶舟]史爲告於少帀(師)。
    上博二《容成氏》10
    ②堯㠯(以)天下襄(讓)於臤(賢)者。
    清華貳《繋年》第六章35
    ③秦穆公㠯(以)亓(其)子妻之。
  6. 接:もって。そして。それで。
    包山《受幾》22
    ①不諓(察)[⿱陳土](陳)宔(主)[⿰角隼](顀)之[⿰昜刂](傷)之古(故)㠯(以)告。
    上博六《莊王既成》1
    㠯(以)昏酖(沈)尹子桱。
    清華貳《繋年》第十六章90
    ③厲公亦見𧜓(禍)㠯(以)死,亡𨒥(後)。
  7. 接:もって。~ので。~のために。
    包山《疋獄》93
    ①𨛡(宛)人𨊠(範)紳訟𨊠(範)駁,㠯(以)亓(其)敓亓(其)𨒥(後)。
    清華壹《金縢》12
    ②今皇天[⿺辶童](動)畏(威),㠯(以)章公惪(德)。
    清華貳《繋年》第十三章63
    ③楚人被[⿱加車](駕)㠯(以)追之。
  8. 助:場所や時間の範囲を示す。のみ。
    上博二《容成氏》27
    ①㙑(禹)乃從灘(漢)㠯(以)南爲名浴(谷)五百。
    上博六《競公瘧》10
    ②自古(姑)、𧈡(尤)㠯(以)西,翏(聊)、𡥨(攝)㠯(以)東

釋形

人が物を持っている形。「携える」「持ってくる」の意味を表している。
殷村南派や周代には右部を省略した略体が用いられ、これが楷書の「㠯」の起源となっている。戦国時代秦国では略体に再び「人」を加えた字体が作られ、これが楷書の「以」の起源となっている。

古くは甲骨文の繁体について「氏(致)」「氐」字と釈す説が主流であった。また「㠯」の起源となった字体は「耜」の初文で農具の象形と考えられていた(徐中舒)。しかし、《合集》277と《合集》32023の対比などにより、「氏」「氐」と考えられていた字体と「㠯」とが繁簡関係にある同一字種であると指摘され、上記の旧説が否定された(島邦男、王貴民、林澐、裘錫圭等)。

釋詞

「㠯」声字は「台」声字や「矣」声字などを含み非常に数が多い。「能」声字を同源とする説もある。


2017/06/03

字典「𦣞(𦣝)」

「𦣞」

釋義

金文

用例は少なく、固有名詞にしか用いられていない
  1. 名:人名。族名。
    𦣞觚,《銘圖》09037;商晩
    𦣞
    鑄子叔黑𦣞盨,《銘圖》05607-05608;春早
    ②鑄子弔(叔)黑𦣞肈乍(作)寶盨。
  2. 名:姓。=姬
    魯伯愈父盤,《銘圖》14448;周晩
    ①魯白(伯)愈父乍(作)鼄(邾)𦣞(姬)仁𦨶(媵)𬐿(沬)盤。
    黄子鬲,《銘圖》02844;春早
    ②黄子乍(作)黄甫(夫)人孟𦣞(姬)器則。

楚簡

用例は「頤」が《周易》に用いられているのみ。
  1. 名:卦の一つ。
    上博三《周易・頤》24
    ①䷚:貞吉。觀,自求口實。

秦簡

用例は「頤」が日書・黄鐘》に用いられているのみ。
  1. 名:あご。おとがい。下あご。
    放馬灘《日書》乙種《黄鐘》206
    ①兑(鋭)顔,兑(鋭)頤,赤黑,免(俛)僂,善病心、腸。

釋形

「䇫」の初文で、梳き櫛の象形(于省吾)。
なお、殷墟甲骨文に「𦣞」の用例はないが、これを偏旁として含む「姬」字が見られる。後代の出土文字資料も同様に「𦣞」の用例は少ない一方で「姬」は多く見られる。郭沫若は顎の象形、白川静は乳房の象形とするが、いずれも金文の字形からの誤釈と考えられる。
《説文》では「𦣞」が「頤」の初文とされているため、習慣的に「𦣞」「頤」を同一字種として扱うことがある。「頤」は隷書楷書ではさまざまな字形が見られる。「顊」は《康煕字典》では「頤」とは別字種として扱われている。

釋詞

「巸」声字と「喜」声字は音義とも近く、同源と考えられる。

  • 《説文》五篇上《喜部》「喜,樂也。」(96下)
  • 《方言》卷十「紛怡,喜也。湘潭之間曰紛怡,或曰巸巳。」
  • 《尚書・堯典》「庶績咸熙。」、《文選・劇秦美新》「庶績咸喜。」
  • 《説文》十二篇下《女部》「媐,說樂也。」(262下)
  • 《玉篇》卷二十一《火部》「熹,熱也,烝也,炙也,熾也。亦作“熈、暿”。」(390)

2017/06/01

字典「負」

「負」

釋義

金文

金文の「負」字は戦国晩期の兵器に一例あるのみである。
  1. 「負陽」:地名。
    負陽令戈,《銘圖》17199;戰晩
    ①十二年,負陽命(令)□雩,工帀(師)樂休,冶□。
また負黍令韓譙戈(《銘圖》17178-17180)は地名「負黍」を「[⿱付臣]余」とする。

楚簡

楚簡に「負」字は用いられていない。
上博三《周易・睽》33「見豕[⿱伓貝](負)𡌆(塗)」、同《周易・解》37「[⿱伓貝](負)𠭯(且)𨍱(乘)。」、今本《周易》が「負」とするところを上博簡は「⿱伓貝」に作る。

秦簡

法律文書では「負う」「償う」の用例が多く見られる。
  1. 動:おう。背負う。背中に物を載せる。
    睡虎地《秦律雜抄》11
    ①吏自佐、史以上從馬、守書私卒,令市取錢焉,皆䙴(遷)。
    嶽麓貳《數・衰分類算題》137
    ②一人米十斗,一人粟十斗,食十斗。
  2. 動:おう。責任、債務をもつ。
    睡虎地《秦律十八種・司空》136
    ①作務及賈而責(債)者,不得代。
    嶽麓壹《占夢書》9貳
    ②夫妻相反者,妻若夫必有死者。
  3. 動:つぐなう。賠償する。
    睡虎地《秦律十八種・倉律》23
    ①其不備,出者之;其贏者,入之。
    睡虎地《秦律十八種・效》174
    ②羣它物當賞(償)而僞出之以彼賞(償)。
  4. 名:つま。=婦
    睡虎地11號木牘反Ⅵ
    ①驚多問新負(婦)、妴得毋恙也?
    睡虎地6號木牘正Ⅴ
    ②驚多問新負(婦)、妴皆得毋恙也?
  5. 名:えびら。矢筒。=箙
    嶽麓貳《數・衰分類算題》132
    ①卒百人,戟十、弩五、三,問得各幾可(何)?
    嶽麓貳《數・衰分類算題》133
    ②述(術)曰:同戟、弩、數,以爲法。

釋形

「人」と「貝」に従う。戦国晩期以前には見られない。「府」の戦国時代に見られる異体字には「𢊾」「⿱付貝」「⿸广負」等があり、「負」は「⿱付貝(府)」から分化した字と思われる(黄德寬)。
南北朝~唐代には説文小篆を楷書化したものとして上部を「刀」とした字体が用いられたが、《五經文字》には「負」が採用された。

釋詞

「負」「背」「倍」は音義とも近く通仮例があり、同源である。
  • 《釋名・釋姿容》「負,背也,置項背也。」
  • 《史記・酈生陸賈列傳》「項王負約不與。」,《漢書・酈陸朱劉叔孫傳》「項王背約不與。」
  • 《釋名・釋形體》「背,倍也,在後稱也。」
  • 馬王堆《老子》甲本《道篇》126「民利百負。」、同乙本233下「民利百倍。」
否定の意志→「そむく」→「負う」という語義展開が考えられる。

2017/05/28

字典「某」

「某」

釋義

金文

用例が少ないが、全て「謀」の意味に用いられる。
諫簋と笰傳盉について「無」あるいは「」と読み否定の意味とする説もある(郭沫若、楊樹達、裘錫圭)。
  1. 動:はかる。くわだてる。計画する。=謀
    禽簋,《銘圖》04984;周早
    ①王伐𬃚(蓋)𥎦(侯),周公某(謀),禽𬒯(祝)。
    諫簋,《銘圖》05336;周中
    ②女(汝)某(謀)不又(有)聞(昏),母(毋)敢不譱(善)。
    笰傳盉,《銘圖》14795;周中
    ③余某(謀)弗[⿱爯又](稱)公命。

楚簡

楚簡では人名の用例が多い。また遣策簡には「梅」の用法が見える。
  1. 代:なにがし。それがし。ある人。
    九店《告武夷》43
    ①含(今)日𨟻(將)欲飤(食),敢㠯(以)亓(其)妻□妻女(汝)。
    清華壹《祝辭》1
    ②句茲也發陽(揚)。
  2. 名:うめ。=梅
    信陽《遣策》21
    ①一垪(瓶)某(梅)𨟻(醬)。
    包山《遣策》255
    ②[⿳宀⿰必必甘](蜜)某(梅)一[⿰缶土](缶)。
  3. 名:姓。=梅
    曾侯乙《乘馬》143
    ①某[⿳艸二艸]之黄爲右[⿰馬𤰇](服)。
    包山《集箸》13
    ②某(梅)瘽才(在)漾陵之厽(三)鉩(璽),[⿵門⿰夕刀](間)御之典匱。
    包山《所屬》193
    訓。
  4. 名:地名。
    葛陵甲三367
    ①某丘一冢。
    葛陵甲三403
    ②[⿰既刂](刏)於𬏄丘、某丘二〼。

釋形

「甘/口」と「木」に従う。《説文》六篇上《木部》「某,酸果也。」段注「此是今梅子正字。」とあり、「楳(梅)」の初文。
先秦文字では「甘」旁と「口」旁はしばしば区別されない。先秦文字の字形は「呆/杲/𣏼/某」形の4種に分けられるが、漢代以降は「某」形が残った(ただし説文小篆は「杲」形)。漢~南北朝代は縦画が上部まで伸びた形が常用されたが、唐代には「其」の下部を「小」に換えたような字体が一般的となった。《康煕字典》は説文小篆を模倣した字体を掲出する。
「牟」の略体「厶」を借りる用法が特に仏教系の写本には多く見られる。

釋詞

「某」と「母」は同音である(《廣韻》莫厚切)。また「某」声と「母/毎」声は互いに通用し、両字は同源と考えられる。

  • 《集韻》平聲《灰韻》謀杯切「梅,或作“楳、某、槑”。」(231)
  • 《説文》三篇下《言部》「謀,慮難曰謀。𠰔,古文謀。𧦥,亦古文。」(46下)
  • 《禮記・中庸》「人道敏政,地道敏樹。」鄭玄注「敏或爲謀。」

張建銘は以下の諸字を同源とし「始まり、兆し」の意味があるとする。
  • 腜,《説文》四篇下《肉部》「婦孕始兆也。」(81下)
  • 媒,《説文》十二篇下《女部》「謀也。謀合二姓者也。」(259下)
  • 謀,《説文》三篇下《言部》「慮難曰謀。」(46下)

2017/05/26

字典「不」

「不」

釋義

甲骨文

「亡」「勿」「弗」などとともに否定詞として用いられる。特に「弗」と用法が近いが、自動詞や「雨」「風」などの天候動詞に対しては「不」が用いられる。また可能性を否定するニュアンスがあり、「~できない」「~ではない」のような意味のときは「不」が用いられやすい。
  1. 副:ず、あらず。否定詞。
    ①甲戌卜:今日雨,雨?
    《屯南》82

    ②丙子卜,韋貞:我其受年?
    《合集》5611正
  2. 助:…か、いなや。疑問語気詞。文末に置かれる。=否
    ①乙□卜,[⿻大匚]:㞢(侑)妣己二羊二豕
    《合集》19883

    ②乙巳卜:今日方其至
    《合集》20410
  3. 名:人名。賓組卜辞に現れる。
    ①貞:子其㞢(有)疾?
    《合集》14007

    ②□寅卜,韋貞:御子
    《合補》1966
  4. 名:方国名。=邳?
    ①庚申卜,王貞:余伐
    《合集》6834正

    ②……三人于中,宜𫳅?
    《合集》1064
  5. 「不用」:用辞の一つ。その占卜が用いられなかったことを表す。
    ①辛酉貞:癸亥又(侑)父丁歲五牢?不用
    《合集》32665
  6. 「不若」:よくない。よくないこと。災い。
    ①甲申卜,争貞:王㞢(有)不若
    《合集》891正

    ②……我勿巳賓,乍帝降不若
    《合集》6497
  7. 「不[⿱幺才]鼄」:兆辞の一つ。意味はわかっていない。

金文

甲骨文同様、否定詞としての用法が多く見られる。決まり文句の多い金文では「不○」といった成語化した詞も多い。
  1. 副:ず、あらず。否定詞。
    ①十枻(世)[⿰𦣠言](忘)。
    獻簋,《銘圖》05221

    ②師㝨虔㒸(墜)。
    師㝨簋,《銘圖》05366-05367

    ③叀(唯)王龏(恭)德谷(裕)天,順(訓)我每(敏)。
    何尊,《銘圖》11819

    井(型)中……毋敢井(型)。
    牧簋,《銘圖》05403
  2. 助:…か、いなや。疑問語気詞。文末に置かれる。=否
    ①女(汝)𧵒(賈)田不(否)
    五祀衛鼎,《銘圖》02497
  3. 形:大きい,「不顯」「不𫠭」。=丕
    不(丕)巩(鞏)先王配命。
    毛公鼎,《銘圖》02518

    不(丕)顯考文王。
    天亡簋,《銘圖》05303

    ③對揚天子不(丕)𫠭(丕)魯休。
    師𡘇父鼎,《銘圖》02476
  4. 名:人名,「子不」。人名用字,「不壽」「不𡢁」。
  5. 名:国名。=邳
    ①不(邳)白(伯)夏子自乍(作)𬯚(尊)罍。
    邳伯夏子缶,《銘圖》14089-14090
  6. 「不廷」「不廷方」:朝廷に出ない国。=不庭
    ①𨨋(鎮)静(靖)不廷
    秦公簋,《銘圖》05370

    ②率褱(懷)不廷方
    毛公鼎,《銘圖》02518

楚簡

否定詞と「大いに」の用法がほとんどである。
上博四《曹沫之陣》64「𫊟(吾)言氏不。」の解釈は一定しない。上博三《周易・蹇》35「九五:大訐(蹇)不(朋)棶(來)。」、今本は「大蹇朋來」に作り、解釈は一定しない。
  1. 副:ず、あらず。否定詞。
    憖。
    包山《集箸言》15反

    ②民從上之命。
    郭店《成之聞之》2

    ③曷今東恙(祥)不章(彰)?
    清華壹《尹至》3
  2. 形:大きい。大いに。=丕
    ①《君奭》曰:“唯髟(冒)不(丕)單爯(稱)惪(德)。”
    郭店《成之聞之》22

    ②《
    上博一《孔子詩論》6
    剌(烈)文》曰:“乍{亡}競隹(維)人,不(丕)㬎(顯)隹(維)惪(德)。”
    ③遠土不(丕)承。
    清華壹《皇門》6

釋形

《詩經・小雅・常棣》「常棣之華,鄂不韡韡。」鄭玄箋「承華者曰鄂,不當作柎。柎,鄂足也。古聲不、柎同也。」より、「柎」の初文で、花萼の象形とする説が定説となっている(羅振玉、王国維、郭沫若、徐中舒)。
また、「茇」の初文で、根の象形とする説がある(趙誠、于省吾、姚孝遂、陳世輝、何琳儀)。

釋詞

王力は否定詞「不」「否」「弗」を同源詞とする。

張建銘、殷寄明などは以下の諸字を同源とする。「不」には否定詞を除くと「大きい」の義があり、今「丕」声字が多くこれをうけつぐ。
  • 丕,《説文》一篇上《一部》「大也。」(1上)
  • 伾,《説文》八篇上《人部》「有力也。」(160下)
  • 魾,《説文》十一篇下《魚部》「大鱯也。」(243下)
「咅」声字には「増加する」義と「破れる」義が見られる。
  • 倍,《集韻》去聲《隊韻》補妹切「加也。」(531)
  • 培,《廣韻》平聲《灰韻》薄回切「益也。」(98)
  • 陪,《玉篇》卷二十二《阜部》「加也,益也。」(418)
  • 剖,《廣韻》上聲《厚韻》普后切「判也,破也。」(327)
  • 掊,《莊子・逍遙游》陸德明釋文「掊,司馬云:“擊破也。”」
「不」声字には「始まる」「盛りになる」「栄える」義が見られる。
  • 坏,《説文》十三篇下《土部》「丘再成者也。」(290下)
  • 肧,《説文》四篇下《肉部》「婦孕一月也。」(81下)
  • 芣,《説文》一篇下《艸部》「華盛。」(16上)
以上より「大きい」「栄える」等を原義とする(PIE *bhel-に近い)。「芣」は字形との関係も伺える。否定の用法は仮借と考えられる。

2017/02/04

ネット字源説考訂9「殺」

ネット字源

「殺」について

風船あられの漢字ブログ

 『殺(サツ)』shā、shàiは、穀物を刈り取る様子を表す会意文字です(藤堂)。漢字の足し算では、メ(刈り取る)+朮(穀物)+殳(動作)=殺・殺(穀物を刈り取る。そぎ取る。転じて殺す)です。

漢字の音符

 甲骨文は、野生のイノシシを矢で射とめた形の彘テイ(狩りの獲物の猪)の変形した字で、イノシシなどの獣を殺す意。……金文第二字は、「猪などの獣の形+殳(つえぼこ)」の会意。つえぼこで獣を打ちころすこと。篆文は、すっかり形が変わり、「乂(刈る)+术(もちあわ)+殳(動作)」に変化し、もちあわの穂を刈る動作で、殺す意を表した。この突然の変化は、「乂+术」の杀(この字は点がとれた略体)の発音がサツ・セツであり、以前の字と同じ音の字で置き換えたと思われる。

OK辞典

 会意文字です。「猪(いのしし)などの獣」の象形と「手に木の杖を持つ」象形から「ころす・いけにえ」を意味する「殺」という漢字が成り立ちました。

常用漢字論

 殺は「乂+朮+殳」に分析できる。乂は二つの線を×形に交差させた図形で、「切り取る」ことを示す記号に用いられる)。朮はモチアワ(アワの一種)である。殳は動作の符号(動詞記号)。したがって殺は「乂(イメージ記号)+朮(イメージ補助記号)+殳(限定符号)」と解析する。この図形でもって、モチアワの皮を剝ぎ取る場面を設定した。「そぎ取ってばらばらにする」というイメージを表す意匠になっている。

ニコニコ大百科

 諸説ある。〔説文〕は杀(𣏂)声の形声とする。ただ杀は〔説文〕に未収。古文の𢁛が変じたものかも知れない。ほかに☓+殳という字に従い朮声の形声、㣇+殳の会意で、㣇という祟りをなす獣を殺す呪儀で、相手方の呪詛の効力を殺ぐとする説(白川静)などがある。

Wiktionary

 会意。「朮(もちあわ)」を「乂(刃物で刈り取る)」「殳(行為)」。

「乂+朮+殳」で「穀物を刈り取る」さまを表しそこから転じて「殺す」の意味になった、という説が最も多い。他に「(猪などの獣)+殳」で「動物を打ち殺すこと」が原義だという説も見られるが、「猪などの獣」とは何なのか(あるいは何の字なのか)、『漢字の音符』は「彘」の変化した字としているが、『OK辞典』はよくわからない。『漢字の音符』は後代の字体について形が変化したのか新しく作ったのか曖昧な記述になっている。

2017/01/23

ネット字源説考訂8「真(眞)」

ネット字源

「真(眞)」について

風船あられの漢字ブログ

 『真(シン)』zhēnは、本当に中身のある様子を表す会意文字です。漢字の足し算では、ヒ(匙・さじ)+鼎(かなえ・容器)=眞・真(匙で中身をいっぱいにする。充実した。嘘のない。真。まこと)です。

漢字の音符 

 金文は、「ヒ(さじ)+鼎(かなえ。煮炊きの器)」 の会意。鼎で煮炊きした食べ物を匙ですくう形で、鼎のなかに食べ物がいっぱい入っているさまを表す。その中身がいっぱいに詰まっていることから、「ほんもの」「まこと」の意味に仮借カシャ(当て字)された。篆文から眞の形になり、新字体は、さらに真に変化する。

OK辞典

 会意文字です(匕+鼎)。「さじ」の象形と「鼎(かなえ)-中国の土器」の象形から鼎に物を詰め、その中身が一杯になって「ほんもの・まこと」を意味する「真」という漢字が成り立ちました。

常用漢字論

 金文に遡ると「匕+鼎」と分析できる。スプーンで鼎に素材を入れる情景を設定したのが眞である。この図形的意匠によって「中に詰め込む」「中身が詰まる」というイメージを表すことができる。

いずれのサイトも「匕+鼎」で、「中身がいっぱい」から「真実」の意味になったとしている。

2017/01/05

ネット字源説考訂7「黒(黑)」

ネット字源

「黒(黑)」について

風船あられの漢字ブログ

 『黒(コク)』heiは、煤(すす)を集めて墨(すみ)を作る様子を描いた漢字です。煤(すす)の原料は松(まつ)、菜種油(なたねあぶら)などが使われます。松、菜種油などを燃やして煤(すす)を取り、膠(にかわ)と混ぜて墨(すみ)を作るのです。この墨の色が黒です。

漢字の音符

 金文・篆文の下部は火二つで、その煙が通る煙突に点々と煤のついたさまを表わす。黒いすす、すなわち黒の意。

OK辞典

 象形文字です。上部は「煙出しに煤(すす)が詰まった」象形、下部は「燃えあがる炎」の象形です。すすの色が黒い事から、「くろい」を意味する「黒」という漢字が成り立ちました。

常用漢字論(《漢字語源語義辞典》略同)

 黑は「𡆧+炎」と分析すべきである。𡆧は煤が点々とついた竈あるいは煙突の形である。単独に存在する字ではない。これに炎を合わせた黑は、火を燃やした後に煤が生じる情景を設定した図形である。

いずれのサイトも「炎」と煙突の象形を組み合わせたもので、原義は「すす」だとしている。

2016/12/23

ネット字源説考訂6「敢」

ネット字源

「敢」について

風船あられの漢字ブログ

 漢字の足し算で表すと手+甘(口に含む)+攵(動作・払う)=敢(封じ込まれた状態を手を使って払う。敢(あ)えて~する)です。
 甘は『口に含む』の意味があります。甘に手と攵(動作・払う)を足すと『含む』から『敢(あ)えて~する』という意味になります。

漢字の音符

 金文と篆文第一字は、「古(ふるい)+上の手+下の手」の会意。古は、祭礼の祝詞(神への祈り言葉)を入れた器を盾で大事に守るかたち。これに上下の手をつけた敢カンは、大事に守る器を両手であえて開けようとすること。今までの慣例にこだわらず、あえてする意となる。

OK辞典

 会意文字です(又+又+占の変形)。「口」の象形と「占いの為に亀の甲羅や牛の骨を焼いて得られた割れ目を無理矢理、両手で押し曲げた」象形から、道理に合わない事を「あえてする」を意味する「敢」という漢字が成り立ちました。

常用漢字論(《漢字語源語義辞典》略同)

 甘は「中に含む」というイメージがある。これは「枠の中に封じ込める」というイメージに転化する。「爪+又」は両手である。両手の間に丿の符号を入れて、両手で力をこめて何かを引き合う情況を示す。かくて「甘(音・イメージ記号)+爪+丿+又(三つでイメージ補助記号)」を合わせて、封じ込められた枠をはねのけようと、強い力をこめる情況を暗示させる。

杓で酒を汲む象形という白川の説も含めて皆バラバラである。しかし、解字が異なるものの「手で開ける」の部分は4サイトともおおむね似ている。『OK辞典』は「又+又+占の変形」という解字とその後の説明が合ってない。

2016/12/21

ネット字源説考訂5「跡」

「跡」の字源について


風船あられの漢字ブログ
>足跡が亦続く様子を漢字にしたものです。漢字の足し算では、足+亦(また)=跡(足また足。足の跡)です。意味は『足跡』、『跡』です。跡と同じ意味を示す漢字では、蹟(足重なる足。足の蹟)があります。同じ意味の漢字『蹟(セキ)』jiの影響を受けて『ヱキ』から『セキ』の発音になっています。

漢字の音符
>「足(あし)+亦(同じものがもう一つある)」 の会意形声。足と同じものがもう一つがある意で、足あとをいう。

OK辞典
>会意兼形声文字です(足+亦)。「胴体の象形と立ち止まる足の象形」(「足」の意味)と「人の両わきに点を加えた文字」(「わき」の意味だが、ここでは、「積み重ねる、あと」の意味)から、「積み重ねられた足あと」を意味する「跡」という漢字が成り立ちました。

《漢字語源語義辞典》
>「亦(音・イメージ記号)+足(限定符号)」を合わせた字。
常用漢字論
>迹は「亦エキ(音・イメージ記号)+辵(限定符号)」と解析する。……。限定符号を辵から足に替えて跡の字体も生まれた。